ホワイトソルガムと私たちの選択
ソルガムは紀元前より栽培されている南アフリカ原産のイネ科の古来穀物。日本ではもろこしやたかきび、中国ではコーリャン、スペインではマイロなどと呼ばれています。
白たかきび(ホワイトソルガム)は 栄養豊富・グルテンフリー・苦みのもとを除き食用向けに品種改良された穀物です。ホワイトソルガムは、自然の雨だけで育つ環境にやさしい穀物なので、サスティナブルな「未来の穀物(future grain)」とも呼ばれています。
1999年、米国にてアメリカ穀物協会のセミナーに参加したことから、私たちはトウモロコシ、大豆、小麦に続く第4の新しい穀物といわれるこの「ホワイトソルガム」に出会いました。「どこにもない新しい食材原料だから日本の人々に食べていただきたい」と思い、2001年、日本で初めて、小麦製粉やコーングリッツ製造で培った技術を活かしたホワイトソルガム専用の工場を立ち上げ、粉や粒(つぶ)製品の製造を始めました。
その後も栽培地であるアメリカ・カンザス州やテキサス州を訪れ、大学教授や専門家と意見を交わしながら、知識と信頼を積み重ねてきました。
Lloyd W. Rooney博士、そしてそのご子息であるBill Rooney博士にもご教授いただいています。
ソルガムシンポジウム(2012)ルーニー博士
ソルガムシンポジウム(2012)
ソルガム国際会議(2019)サラダ
ソルガム国際会議(2019)
私たちの挑戦(誰も相手にしてくれない新しい穀物ホワイトソルガム)
ホワイトソルガムの製造を始めた当初は、菓子用、醸造用など新しい食品素材原料として使用できないかと、食品メーカーや醸造メーカー、問屋等に持ち込んだものの「消費者の知らない穀物は取り扱わない」と見向きもされませんでした。
さらに、食物繊維が米粉の約4倍、マグネシウムは約6.5倍と豊富で栄養が高く優れた穀物なのに、グルテンを含まないため調理するのが難しい。どうしたら使ってもらえるのかと悩む日々でした。
商品開発はいつもお客様の一言から
“やがて転機が訪れました。2002年12月某新聞の家庭欄に「食物繊維がたっぷり、米、小麦アレルギーの人に安心」とホワイトソルガムの記事が掲載され、全国の方々から400件を超えるお問い合わせが殺到したのです。これを切掛けに この「ホワイトソルガム」が「食物アレルギー対応(グルテンフリー)食材」として必要とされていることを認識し、アレルギーに困っている方々へのアレルギー対応食品の開発、小売事業への展開等、新たな可能性に挑み始めました。
お買い上げ頂いたお客様お一人お一人にお電話し、「どんなものを作りましたか?」「何に困っていますか?」「どんな商品がほしいですか?」とお尋ねし、その中で多くのことを教えていただきました。当時、要望が多かったのは、小麦なしのマカロニ。「給食にでるマカロニサラダやケチャップ和えを皆と同じように食べさせてあげたい」という想いをお聞きし、マカロニタイプのパスタを開発し、作り上げました。それをお伝えしたところ、「穴はあいてますか」と聞かれ「穴が空いているマカロニですよ」とお伝えしたら「嬉しい!」と涙声で喜んでくださいました。
その商品には、多くの方に“幸せ”をお届けできるようにと『フェリーチェ(幸せ)』と名付けました。
開発コンセプトは常に「足し算はできるけど、引き算はできない」
「ひとつでもアレルゲンが入っていたら、食べられない。ひとりでも多くの方が食べられるように、できる限りシンプルな原材料で商品を作ってほしい。しかも安心安全な原材料で美味しいものを!」アレルギーの方やご家族から学んだ、大切な考え方です。
この言葉を胸に、私たちは「シンプルで安心な素材で美味しいものを!」を基本に、すべての商品を開発しています。
保存料・香料・着色料は不使用、甜菜糖や天然由来の増粘多糖類、アルミフリーのベーキングパウダーを使用し、アレルゲンのコンタミも徹底的に排除。 すべては 一人でも多くの方に「食べる楽しさ」をお届けしたいという想いからです。
- ◯ 卵・乳・小麦なしで水だけで簡単に失敗なくお菓子作りができる「おかしミックス粉」
- ◯ 小麦の代わりに料理に使える、砂糖や食塩なし「料理ミックス粉」
- ◯ 和洋中の麺料理(主食)に使える「ソルガムきび麺」
- ◯ 子供が喜ぶようなかわいい形のマカロニ「ほしとハートのパスタ」
- ◯ 幼児が食べやすい短い麺「みじかいソル麺」
- ◯ レンジと水だけあれば簡単に作れる「パックde蒸しパンシリーズ」
(プレーン・食事パンタイプ・かぼちゃ味・ココア味・抹茶味・機能性表示食品プレミアム)
その後もお客様のご要望をお聞きしながら一つ一つ商品化してきました。

給食に持っていけるパン開発への挑戦
アレルギーっ子のお母さんの声、「パックde蒸しパンはおいしいけれど、給食に持っていける、まるパンを簡単に作りたい」をきっかけに、2023年から「まるパンミックス」の開発をスタート。
商品開発は、まるで地図のない旅です。
これまで「ソルガム粉だけではパンはできない」という定説がある中、無謀とも思える挑戦でした。
ソルガム100%のレシピは存在せず、試行錯誤の日々。
まずは「今の給食でどんなパンが出ているのか?」から調査を始め、レシピの研究、社内ではパンづくりに詳しいスタッフのアドバイスをもらいながらの手探りの開発。
その中で寄せられた声は、実にさまざまでした。
「発酵が面倒…」→ 発酵不要に。
「オーブンがない」→ トースターで焼ける設計に。
「子どもと一緒に粘土遊びのように作れたら」→ 食育にもつながる簡単な工程に。
「米粉パンばかりで米アレルギーに…」→ 米粉不使用、ホワイトソルガム100%に。
「冷凍パンは高くて添加物も心配」→ 添加物不使用で、家庭で手軽に作れるように。
こうしたひとつひとつの声に真摯に向き合い、当社の研究室や家庭で何度も何度も試作と試食を繰り返しました。
「これ、パンというより…お餅?」
「すごい!少しずつパンらしくなってきた!」
そんな声が飛び交いながら、味や配合、焼き方などを微調整し、トースターの種類を変えて何度も焼き直す。
2年の歳月を経て、やっとのことで納得のいく仕上がりになり、お客様にモニターを依頼しました。
もちろん、モニターを依頼したのは、アレルギーっ子のママたちです。
皆様からいただけたのは、「おいしい!」「楽すぎてびっくり!」「この商品は有難い。素晴らしい!」の声。
楽しそうにパン作りをする子どもたちの笑顔や、まるパンミックス粉にもかかわらず、多彩にアレンジをして作ってくださった美味しそうなパンの写真の数々を見て、社内は安堵のため息と笑顔で溢れたのでした。
こうしてようやく、まるパンミックス粉は商品化にたどり着いたのです。
トースターでの焼色を試す
モニターさんのご家庭でのパン作り
パンを割ってみる
家庭でのパン試作
すべては、食卓に笑顔を届けるために
「家族みんなで、同じものをおいしく食べられる幸せを。」
それが、私たちの開発の原点であり、ゴールです。
これからもお客様の声に耳を傾け、一歩ずつ、誠実に。
ホワイトソルガムの可能性を信じ、安心でおいしい商品を心を込めてつくり続けてまいります。